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 医療は人の命を救うためにあるものですが、同時に、常に事故や過誤の可能性をはらむものでもあります。今回は「医療過誤」について取り上げていきます。

医療過誤とは何か~医療事故との違い

 「医療過誤」という言葉は、多くの人にとってなじみの浅いものです。そのため、まずここでは、「医療過誤とはそもそも何か」について解説していきます。

・医療過誤とは

 「医療過誤」とは、人の起こしたミスによって起きた医療上の事故をいいます。医療過誤の大きなポイントは、「きちんと正しい手順で行い、注意を払ってさえいれば防ぐことができたものである」という点です。
 たとえば、医療スタッフ同士の相互のやりとりがきちんとできていなかったことによる事故や、手術・診察ミスなどが医療過誤の代表例です。

・医療事故との違い

 比較的よく耳にする単語として、「医療事故」があります。これは、「医療行為とは直接的には結びつかない状態で起こった事故」をいいます。また、医療過誤は医療関係者が患者に対して起こすものであるのに対し、医療事故はその被害対象に医療関係者・医療従事者を含むものです。
 ただ、医療過誤と医療事故の違いは、それほど明確なものではありません。このため、「医療過誤=医療事故」として取り扱い、解説することもあります。

医療過誤の具体例

 自分自身や大切な家族に傷がついたり、また命を落としたりした場合、その悲しみははかりしれません。「異常があるから病院に行ったのに、助けてくれなかった」「あのときにきちんと対応してくれていたのなら、家族は助かったのに」と感じることは、ある意味では当然のことですし、感情があふれ出るのも当然のことです。それが不可逆のものであるのならばなおさらです。
 このようなこともあり、医療の現場では正確な診断と綿密な連携が求められます。そんななかで、医療過誤であると判断された場合、医療従事者が負うことになる責任として、

  • 民事上の責任
  • 行政上の責任
  • 刑事上の責任

 医療裁判の難しさ~勝率はわずか20パーセントの狭き門の3つがあります。交通事故などのときにも取り上げられるものですから、これについてはよく知っている人も多いことでしょう。

 民事上の責任としては、「損害の賠償責任」が挙げられます。慰謝料や治療費、医療過誤が起きていなければ、その人が得られたであろう逸失利益などを、賠償する必要があります。
 また、たとえば医師が医療過誤を起こしたと判断された場合、それほど多くはないものの、行政上の処分を受ける可能性もゼロではありません。もっとも重い処罰は、「医師免許の取り消し」です。
 また、刑事上の責任として、業務上過失致死傷罪などに問われることもあります。

 実際に起きた医療事故であるとして示談―賠償金の支払いに至った例として、

  • 分娩の際に、分娩監視義務を怠ったことが原因として死産となった
  • 子宮頸がんが陽性であったにも関わらず、見落とした
  • 胃の全摘手術の際に、血管に損傷が起きて死亡した

などが挙げられます。

 また、令和2年の3月4日に判決が下された医療過誤問題の裁判例として、「双生児のうち、第2子が双胎間輸血症候群(2人の胎児の循環バランスが崩れることによって、片方が受血児、片方がドナーとなってしまう症状。受血児となった子どものほうには心不全などがみられ、ドナーとなった子どものほうには腎不全などがみられる。治療を施さなかった場合、80パーセント以上の確率で死亡する)で死亡した」というものがあります。
 診察を受け持っていた担当医師が、診断や転医勧奨(必要に応じて、ほかの医師に変えるように勧めること)を怠ったとするもので、このケースでは原告の請求が認められました。

 ただ、これはあくまで一例です。
 医療過誤の診断には慎重さが求められるため、内容が不明瞭な状態で「〇〇ならば医療過誤である」「××ならば医療過誤ではない」と断じることはできません。

医療裁判の難しさ~勝率はわずか20パーセントの狭き門

 上記では、「医療過誤である」として示談に至ったケースや、裁判で医療過誤であることが認められた例を紹介しました。
 しかし、医療裁判は非常に難しいものです。医療過誤であるとして起こされた訴訟のうち、原告側(患者側)の訴えが認められて勝訴となった事例は、わずか20パーセント程度だといわれています。

 勝訴が難しい理由として、以下の4点が挙げられます。

・弁護士にも専門的な知識が必要

 弁護士は法律の専門家ですが、医療裁判を勝ち抜くためには、法律の知識に加えて非常に高いレベルの医学的な知識も求められます。病院側の代理人とは異なり、患者側の弁護士は自分自身で資料を集めて戦っていかなければなりません。「弁護士の持っている医療知識」が、裁判に大きく影響します。

・協力医が必要となる

 裁判においては、専門医の作った私的鑑定意見書が必要となります。これは、医師でなければ作ることができません。このため、これを作ることのできる協力医を確保し、協力を仰がなければなりません。

・裁判官に理解させる力も必要になる

 医療裁判の裁判官は、医学的な知識を有している者が担当します。しかし、それでも「医療事件を専門にする部署に配属されてから、まだ日が浅い裁判官」が担当することになるケースもあります。彼らにわかりやすく、かつ説得力のある言葉で主張を伝えていく必要もあります。

・そもそも、過失であるとはっきりしている場合は示談になるケースが多い

 ここでは「裁判に至ったときの話」をしていますが、実際には裁判に至る前に、上記で述べたように示談に至るケースも多くあります。たしかに「裁判に至った場合の勝訴率は20パーセント程度」ではありますが、「示談をしても、患者側の意見は20パーセントしか通らない」と考えるのは間違いです。

 いずれにせよ、医療過誤の問題は非常にデリケートで扱いに慎重さが求められるものです。「命を救うための医療のミスである」と受け取った場合の動揺は非常に大きいものですし、当然感情がゆすぶられるものです。そのなかで冷静になるのはとても難しいものですが、そのような状況だからこそ、専門家の意見を仰ぐことが強く求められます。

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